レースの舞台となったホッケンハイムは、3つの長いストレートがシケインで組み合わされた、平均速度がGP開催のサーキットでもっとも速い。最高速度は時速350キロを優に超え、アクセルを全開にしている時間がコースの60〜70パーセントに達する。エンジンパワーが勝敗の鍵を握るため、BMWはホッケンハイムのコース特性に合わせた高回転型のスペシャルエンジンを投入している。エンジンのパワー向上に伴 い、BMW Williams F1チームの2台はホッケンハイムの3本のストレートだけでなく、曲がりくねった最終区間でも際立って安定感のある走りを実現していた。それは、FW23がウイングを立てて充分なダウンフォースを得ていてもなお、マシンを力強く引っ張るだけのBMWパワーがあったからである。最終的に、BMW Williams F1チームの2台が今季初のフロントローを独占。新人のファン・パブロ・モントーヤは実にデビュー12戦目にして初めてのPPを獲得する。
そして迎えた決勝レース、BMW Williams F1チームの2台はきれいなスタートを決め、1-2態勢で1コーナーを制覇するが、後続のマシンがクラッシュ。レースはいったん中断され、再スタートとなってしまった。20分後に2回目のスタートが行われたが、ここでもBMW Williams F1チームはモントーヤ、ラルフの順の1-2態勢をしっかりと堅持して、1コーナーをクリア。その後は予選で見せつけたスピードを披露し、周回を重ねるごとに、どんどん後続を引き離していく。特にPPを獲得したモントーヤのペースは驚異的で、20周目にはラルフに9秒、3位のミハエル・シューマッハには25秒以上の大差をつけている。モントーヤは23周目にピットイン、このレースで唯一のタイヤ交換&給油をするが、何と給油装置のトラブルで予定を大幅にオーバーする約30秒のストップを強いられ、4位までポジションダウン。モントーヤは追い上げを図るが、2周後にエンジントラブルが発生、残念ながらコース上にマシンを止めることになってしまった。
真夏の日差しが照りつけるサーキットは気温が30度を超え、コース上では次々とマシンがストップしていく。51勝目のF1最多勝記録のかかったミハエル・シューマッハ、マクラーレンの2台などもトラブルでリタイアを喫する。しかし、ラルフのFW23は終始ノートラブル、安定したペースでラップを重ねた。結局、2位のフェラーリに50秒近くのギャップをつけてトップでチェッカー。再びドライバーズ選手権で3位に上がり、BMW Williams F1チームはコンストラクターズ選手権で2位のマクラーレンに10点差に迫った。